第13章 ロストロングラブレター
「…おかりん、何?」
「千くん……。”零とモモだって似合ってるよ”じゃなくて、”零とモモの方が似合ってるよ”でしょう!!あれじゃフォローになってないよ!?」
「え……」
顕著に顔を歪める千に、岡崎はやれやれとため息を溢した。
「百くん、大丈夫かなぁ……。零ちゃんのドラマの撮影が始まってから、元気がないというか」
「……そうね。百は自分のことになると抱え込む癖があるから。なんとかしてあげたいんだけど……。あ」
千は思いついたように言ってから、スマホを出して電話をかけ始めた。
「………もしもし」
≪もしもし?何の用?≫
「何の用ってことないだろ。元相方に向かって」
千が電話を掛けたのは、万理だった。
≪何。今撮影で忙しいんだよ≫
「冷たいな……。零のドラマ見たよ。すごく良かった」
≪ああ、ありがとう。……いや、それ俺じゃなくて零ちゃんに直接言えよ≫
「万、モモが寂しがってるんだ。なんとかできない?」
≪え?百くんが?……それは問題だな。うん、なんとかスケジュール調整してみるよ≫
「なんか…僕とモモとの扱いの差すごくない?」
≪何が?……あ、今日モモくんは何してるの?明日は久しぶりに午後からで、今日はもうスタジオでVチェックだけなんだ≫
「そうなの?じゃあ万からモモに言ってあげてよ」
≪わかった。今からモモくんに連絡してみるよ。零ちゃんも喜ぶ。それじゃ≫
ブチ、とそのまま電話は切られてしまった。
千はむすっとした表情でスマホを見つめてから、ぶっきらぼうにテーブルに置いた。
しばらくしてから、応接間のドアが開いた。
「ユキ、おかりん!オレ、ちょっと出てくるね!」
「零ちゃんと会うんですか?」
「うん、今バンさんから連絡があって。スタジオにおいでって言ってくれた!」
嬉しそうに笑っている百の姿を見て、千はほっと胸を撫で下ろした。
「……頑張れ、モモ。」
―――いつものように。モモと零の幸せそうな笑顔を、早く僕にも見せてね。
そんなことを思いながら、千と岡崎は百の背中を見送った。