第13章 ロストロングラブレター
その頃――。
岡崎事務所では、事務所の大画面テレビを百と千と岡崎の三人が囲んでいた。
一人で零のドラマを見るのが怖いという百に、千と岡崎が付き添うことになったのだ。
「うわー……緊張する……っ!」
「……なんでモモが緊張するんだ?」
「だって……!だって!画面のなかとはいえ零が……!零が…っ!!……うぅっ……」
「はいはい、百くん落ち着いて。大丈夫ですよ、自分たちがついてます」
「……そんなに見たくないなら見なければいいのに」
「それはできないよ!!絶対見るって約束しちゃったし……零が頑張ってる姿、ちゃんと見たいし……」
「百くんの気持ち、自分はわかりますよ!」
「おかりん……っ!」
そんなやり取りをしていれば、ついに初回放送が始まった。
ぎゃあぎゃあと言い合っていたのが嘘のように、百はぴたりと静かになり、真剣に見入っていた。
二人が再会して見つめ合い、天が零の腕を引いて抱き締めたところでエンディングが流れる。
約一時間、ほとんど何も喋らなかった百に違和感を覚えて、千はおそるおそる隣に座っている百を見た。
「……モモ、大丈夫か」
「……え?なんで!?大丈夫だよ!?」
「いや……何も喋らないから……」
「夢中になって見てただけですよ。ね、百くん」
「うん……」
何か言いたげな百に、心配そうな千。
「……モモ?」
「……なんか、こうして見るとやっぱり…零と天って、お似合いだなって」
「………。大丈夫だ、モモ。零とモモだって似合ってるよ」
「……あはは……。ユキ、ありがとう」
「…百くん!零ちゃんに電話してきたらどうかな?ドラマ見たよって。きっと喜びますよ。最近会えてないんですし、迎えに行ったらどうですか?」
「……そうだね!電話してみる。すっっごい良かったって、めちゃくちゃ可愛かったって、ちゃんと報告してくる!」
なんとか百を元気づけようと、岡崎がフォローをいれてみれば。百はスマホを持ったまま立ち上がって、事務所の応接間を出て行った。
百が出て行ったのを確認してから、岡崎は千をじーっと恨めし気に見つめた。