第13章 ロストロングラブレター
「―――はい、カットー!!」
監督の言葉に、はっと我に返る。
それでも目の前にある天の顔は、私を離してはくれなくて。
「天くん!今のアドリブ、すごいよかったよ!!」
監督から掛かった言葉に、天は漸く零から視線を外して、監督に向かってほほ笑んだ。
「ありがとうございます。大丈夫でしたか?」
「すっごくよかったよー!原作を生かしつつ、更に深みを持たせるような、絶妙な言葉選びだった。零ちゃんの表情も最高だったよ!!いやー、本当に長年想い合ってた幼馴染みたいだね!」
『…………』
監督の言葉に、うまく返事をすることができなかった。
未だに心臓がどきどきと音を立てていて、一向に収まってくれない。天からの視線を感じたけれど、今はなぜか天と目を合わせるのが怖くて、監督に一礼をしてからそのまま、スタジオの中へと一目散に走った。