第13章 ロストロングラブレター
「天くん、お疲れ様!すごくよかったよ!明日もよろしくね!」
「ありがとうございます。はい、よろしくお願いします」
撮影を終えて、スタッフに挨拶をしていれば。
ふと、端の方へと駆けていく零の姿を視界に捉えた。
無意識に目で追っていれば、彼女は何やら誰かに電話をかけ始めて。
照れたり、笑ったり、怒ったり、くるくると表情を変えながら誰かと会話をして電話を切った。
―――電話の相手が誰か、なんて。
彼女の表情でわかってしまう自分に、どうしようもなく嫌になる。
随分幸せそうな顔で笑うんだね。いつからそんな艶っぽい表情ができるようになったの?なんて、心の奥底から沸々と湧き上がってくる醜い感情を必死に抑え込む。
「――天、帰るわよ」
姉鷺マネージャーから掛かった声に、漸く我に返る。
彼女の遠くなっていく背中を見つめてから、重い足取りで踵を返した。