第13章 ロストロングラブレター
「お疲れ様でしたー!」
今日一日の撮影が終了した頃には、辺りはもう真っ暗だった。
スタッフに挨拶をし終えた零の元へ、万理がお茶を持って駆け寄ってくる。
「お疲れ様。今日も頑張ったね。後半の演技、すごく良かったよ!」
『お疲れ様です!え、本当ですか?よかった……』
――天のアドバイスのおかげだろう。後半は、驚くほど自然に笑えていた気がする。
「あ、そうだ。百くんから、電話鳴ってたよ。掛け直してあげて」
万理はそういって、零から預かっていたスマホを差し出した。
お礼を言ってから、少し離れた場所で百に電話を掛ける。
『……もしもし。百?電話遅れてごめんね、今終わった』
≪もしもーし。遅くまでお疲れさま!ううん、こっちこそ撮影中にごめん。どうだった?≫
『うーん……まあまあ……かな?』
≪あはは!そっかそっか。初回放送の日、ユキとおかりんとばっちり鑑賞会するから!それぞれ500字以上で、読書感想文ならぬドラマ鑑賞文を送りますっ!楽しみにしてるね!≫
『なにそれ、作文送りつけてくる気!?しかも、三人で鑑賞会とか…超恥ずかしい……やめてよ!』
≪なんで?いいじゃん!画面の中の可愛い零を、二人にめちゃくちゃ自慢するからっ!≫
『…ばか……っ!』
≪あはは、照れた?≫
『……うるさい!』
≪ごめんごめん。そうだ、天とは普通に話せてる?ちゃんと仲直り、できるといいね≫
『……うん。ありがと……百』
電話を切ってから、スマホをぎゅっと握りしめる。
長い撮影で疲れたであろう私を元気づけてくれようとしている百の優しさが伝わってきて、思わず笑みが零れてしまう。
自分がいかに百に助けられているか改めて実感してから、待ってくれている万理の元へと駆けていった。