第3章 交錯する想い
「ハニー、会いたかったよー!」
零がスタジオに入ってすぐに、白と黒のツートンカラーで視界が覆われた。ふわり、と甘い匂いが鼻を掠めたかと思えば、ふわふわの髪の毛が頬にかかってくすぐったい。
『ちょっと百!いきなり抱き着かないで!』
「だってー!ずっと会えなくて寂しかったんだもん!」
「モモ、尻尾がちぎれそうなくらい嬉しいのはわかるけど、うれションしないように気をつけてよ」
「えっ、ごめんユキ!もう出ちゃった!」
「汚っ」
いつものやり取りを繰り広げるのは、Re:valeの百と千だ。
二人との付き合いは、もう三年近くになる。
出会いは、零がまだデビューをする前、テレビ局で挨拶回りをしていたときのことだった。
偶然スタジオで収録をしていた百に、突然声を掛けられたのだ。
―――"「あの………オレ達の…っ、Re:valeの、MVに出てくれませんか!?」"
あまりに唐突すぎる言葉に、零も音晴も言葉を失った。その時はまだ駆け出しだったけれど、人気上昇中のRe:valeから、まさかそんな声がかかるなんて、と。あの時の衝撃は、まだ記憶に新しい。
そのMVが話題になり、Re:vaveと共に零は大ブレイク。以来彼らとは、レギュラー番組を一本とラジオを一本、互いのライブにも何度もゲスト出演し、プライベートもしょっちゅう遊ぶほどの仲になった。
『ずっと会えなかったって、最後に会ってからまだ一週間も経ってないよね?』
「オレにとっては十分長かったの!毎日涙で枕を濡らしてたんだから!」
「そうだよ、零。だから、もっとモモのことよしよししてあげて」
『はいはい、よーしよし!』
「わんわん!」
零は自分よりもずっと背の高い百の頭をわしゃわしゃと撫でた。頭をぐっしゃぐしゃにされながらも、百は嬉しそうに笑っている。