第13章 ロストロングラブレター
零の瞳はきらきらと輝いて、なんだかラムネの中で光るビー玉みたいだった。そして、さっきまで落ち込んでいたのが嘘みたいに、キミは笑った。花が咲いたような、そんな笑顔で。
『うん…っ私、天のお嫁さんになる!』
「ほんとに?約束だよ?」
『うん。約束だよ!』
―――今でも、この約束を信じていると言ったら。キミは笑う?
今思えば、随分マセた子供だよね。
今でも自分の言った台詞は鮮明に覚えていて、思い出す度に恥ずかしくてたまらなくなる。
小さい頃の口約束を未だに信じているなんて、側から見れば笑い者だ。
でも。
優しいキミのことだから。
世界中の誰が笑ったって
キミだけは、ボクを笑わない気がするんだ。
「―――天!ちょっと、天!」
名前を呼ぶ声に、ハッと我に返る。
慌てて顔をあげて見れば、心配そうな表情で姉鷺マネージャーが顔を覗き込んでいた。
「ちょっと、大丈夫?具合が優れないとかじゃないわよね?クランクイン、今日からなのよ?」
「……すみません。少し考え事をしていただけです」
「そう?アナタ最近、ボーッとしてること多いわよ。どうしたの?」
なんでもない、と笑顔を返してマネージャーを安心させてから、車の窓から流れる景色に目を向けた。
急遽零との連続ドラマが決まってから、どこか心ここに在らずだった。
ただでさえ今までだって彼女のことばかり考えていたというのに、まさかドラマで、想い合っていた幼馴染役として共演することになるなんて。