第13章 ロストロングラブレター
『……学校の宿題でね、将来なりたいものを書かなくちゃいけなくて。でも、なりたいものなんてできたことないから。みんなは看護師さんとかケーキ屋さんとか書いてるのに、私だけなくって。それって、変なのかなあって』
「……変じゃないよ。人生は長いんだから。なりたいものなんて、その長い人生を歩んでいくうちに決めればいいでしょう。どうせいま看護師さんやケーキ屋さんになりたいなんて言ってる子達だって、一年後や二年後にはなりたいものなんて変わってるよ」
『そうかなぁ?』
「そうだよ。変なんかじゃない。零は零。他人のことなんて気にしないで。そのままでいい。なりたいものなんて、ゆっくり決めていけばいいんだから」
『そっか……ありがとう、天……っ!元気出た!…でも、何か書かないといけないんだって……。どうしようかな…』
「……そうだね。なら、とっておきがあるよ」
『とっておき?』
瞳をまん丸にして、訊ねる零に。
ボクは、とっておきを教えた。
「ボクのお嫁さん」
『……天のお嫁さん?』
きょとん、としながら聞き返す零に、ボクは照れ臭いのを隠すようにして続けた。
「……キミはわがままだし、弱虫だし、キミのことを幸せにしてあげられるのなんて、ボクしかいないと思うよ」
『うっ……。…じゃ、じゃあ、天が……私を幸せにしてくれるの?』
「うん。……ねえ、零。約束するよ」
『約束?』
「そう。ボクがキミを世界で一番幸せにするっていう、約束。ボクにしか出来ない事で、キミをいっぱいいっぱい笑顔にして、誰よりも幸せにしてあげる。だから」
―――だから。
「……いつか、ボクが夢を叶えることができたら。その時は―――……ボクの、お嫁さんになってくれる?」