第13章 ロストロングラブレター
―――ねえ、零。
キミは覚えてる?
幼い頃に交わした、小さな約束を―――。
家の近くにあったこじんまりとした公園は、ボク達の遊び場だった。
小さな砂場と、滑り台に、ブランコと鉄棒。それくらいしか遊具のない小さな公園だったけれど、病気がちな弟たちと遊んでやりたいのに遠出のできないボク達にとっては、其処は十分な遊園地だった。
その日は確か、今日みたいに暑い夏の日で。
小学校の帰り道に公園の前を通れば、ブランコに見慣れた人影が座っていた。
それは遠目からでもわかる、ボクの大好きな女の子。
慌てて駆け寄ってみれば、こちらに気づいた彼女が顔を上げた。
けれど、いつもにこにこ笑っている彼女の顔に笑顔はなくて、形の良い眉が八の字に下がっている。
大きな瞳は不安げに揺れていて、小さな口はきゅっと結ばれていて。そんな彼女の座るブランコの横に座ってから、ボクは訊ねた。
「元気ないね。なにかあった?」
『……うん』
掠れた声で頷いてから、零は俯いた。
「話して。ボクが解決してあげる」
そう答えれば、彼女は俯いていた顔をゆっくりと上げた。
『ほんと?』
「うん。今までボクに、キミの悩みを解決できなかったことがあった?」
『……ない!』
わかりやすく嬉しそうな顔をする零に、思わず表情が綻んだ。年上の癖に、彼女はボクよりもずっと子供っぽい。
お姉ちゃんだから!なんて陸の前ではカッコつけてるけど、ボクの前では泣き虫で、わがままで。他の誰でもない、ボクが守ってあげなくちゃならない、か弱い女の子だ。