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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター




――NO DOUBTのMVを初めて見た時、百ってこんな大人っぽい表情できるんだ!?なんて驚いたのは記憶に新しい。けれど、好きだと言われてからは、むしろ大人っぽい表情を見る事の方が多くなって。その度に、こうして心臓がうるさいくらいに鳴るんだ。

そんな私の気なんて知らずに、百は大人っぽい表情のまま、幸せそうに微笑んでから口を開いた。


「……十分すぎるほど、幸せだよ。この一瞬が一生分の幸せです、って言われても満足できちゃうくらい。そんな幸せを、オレは毎日零からもらってる。これ以上のわがままなんて、何もないよ」


骨張った指がゆっくりと伸びてきて、熱くなってる頬にそっと触れた。
ぎゅ、と目を閉じれば、唇に柔らかな感触が降りてきて。
しばらくそのまま、ぴたりと動けなくなる。静かな部屋で、こんなに近くて、心臓の音が聞こえてしまいそう。

そっと唇が離れたかと思えば、目を開ける間もなく再びぎゅうう、と抱き締められた。


『……ぐるじい』

「零が可愛すぎて辛い…!」

『……はいはい』


抱き締められた腕の中で胸に顔を埋めていれば、いつも百から香る柔軟剤の匂いが鼻いっぱいに広がって、たまらなく癒される。
腕を緩めてくれる様子はなくて、少し息苦しいけれど。百が満足してくれるなら、まぁいいか、なんて思いながら。


『……おやすみ、百』

「おやすみ、ハニー。愛してるよ」


その言葉と共におでこに優しいキスが降りてきて、そっと瞳を閉じる。

心地良い夢の世界に誘われて、温かい百の腕の中でゆっくりと眠りに落ちた。



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