第13章 ロストロングラブレター
「……不安じゃない、って言ったら、嘘になるよ……でも、天と零には、ちゃんとまた仲直りしてほしい。こけら落とし以来、天と気まずそうにしてるじゃん。幼馴染なのに、お互い大事なのに、なんでかなって…歯がゆくなったりして。……でも、撮影とはいえ零が天とキスしたりすることに、嫉妬してるかっこ悪い自分もいる。零、行かないで、ここにいて!って、止めたくなる自分もいる……。……オレは、欲張りだね」
百の言葉に、じんじんと胸が痛む。
背中から回されている百の腕を、ぎゅっと両手で抱き締めた。
『……そんなことないよ。百はもっともっと、欲張りになっていいんだから』
―――百が、願うなら。
なんだって叶えてあげたいって。そう思うんだよ。
『不安なら不安って、素直に言っていいんだからね。嫌なら嫌って、言っていいんだからね。……撮影のことはどうにもできないけど、そのぶん、いっぱい百のわがまま聞いてあげるから』
「……もう、十分すぎるくらい聞いてもらってるのに?」
『え?百が言ってることなんて、全然、わがままのうちに入んないよ』
「……零は優しいね。これ以上オレを夢中にさせてどうするの?モモちゃんおかしくなっちゃうよ」
『……優しいのは百でしょ。だから、もっとわがまま言っていいよ』
そう返せば、百は抱き締めていた腕をそっと緩めた。
「ね、こっち向いて」
『……うん』
くるり、と百の方を向けば。
真剣な顔で、こちらを見つめる百の顔がすぐ目の前にあって。
いつもは子供っぽいのに、時折こうやって大人っぽい表情をする百に心臓がどきどきと音を立てる。