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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第13章 ロストロングラブレター




お風呂と歯磨きを済ませて寝室に入れば、百はベッドに寝転んで雑誌を読んでいた。


『先に寝ててよかったのに。百、明日早いんでしょ?』

「んー?零がいるのに、先に寝るとかもったいないことしないよ」

『……なにそれ。電気、消すよ』


恥ずかしげもなくそんな台詞を言うものだから、つい照れてしまう。いつまでたっても、百のストレートな愛情表現に慣れることはないみたい。赤くなった顔がばれないように、電気を消した。



ベッドに入ってアラームをセットしていれば、後ろからぎゅっと抱き締められた。
髪の毛に顔を埋めてくるものだから、なんだかくすぐったい。


『ちょっと、くすぐったいよ、百』

「だって、零の髪の毛の匂い、好きなんだもん」

『百と一緒のシャンプーじゃん』

「それがいいんじゃんか。オレの零、って感じがして。嬉しくなんの!」

『……ふうん』


――百は、私をどきどきさせる天才なのかな。

そんなことを思いながら、アラームをセットし終えたスマホをベッドの脇にある棚に置く。


「……撮影、いつから?」

『ん…。明後日から』


ドラマのことについて、あれ以来話してこなかったものだから、少しだけ驚いた。
あんまり話してほしくないのかな、と思っていたから、話さないようにはしていたけれど。やっぱり気になるのかな、なんて思うときゅっと胸が締め付けられる。


『……ねえ、百』

「…うん」

『……不安?』


そう問えば、すぐに返事はかえってこなくて。
代わりに、抱き締められている腕の力がぎゅっと強まる。

しばしの沈黙が流れてから、百が小さく口を開いた。
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