第13章 ロストロングラブレター
お風呂と歯磨きを済ませて寝室に入れば、百はベッドに寝転んで雑誌を読んでいた。
『先に寝ててよかったのに。百、明日早いんでしょ?』
「んー?零がいるのに、先に寝るとかもったいないことしないよ」
『……なにそれ。電気、消すよ』
恥ずかしげもなくそんな台詞を言うものだから、つい照れてしまう。いつまでたっても、百のストレートな愛情表現に慣れることはないみたい。赤くなった顔がばれないように、電気を消した。
ベッドに入ってアラームをセットしていれば、後ろからぎゅっと抱き締められた。
髪の毛に顔を埋めてくるものだから、なんだかくすぐったい。
『ちょっと、くすぐったいよ、百』
「だって、零の髪の毛の匂い、好きなんだもん」
『百と一緒のシャンプーじゃん』
「それがいいんじゃんか。オレの零、って感じがして。嬉しくなんの!」
『……ふうん』
――百は、私をどきどきさせる天才なのかな。
そんなことを思いながら、アラームをセットし終えたスマホをベッドの脇にある棚に置く。
「……撮影、いつから?」
『ん…。明後日から』
ドラマのことについて、あれ以来話してこなかったものだから、少しだけ驚いた。
あんまり話してほしくないのかな、と思っていたから、話さないようにはしていたけれど。やっぱり気になるのかな、なんて思うときゅっと胸が締め付けられる。
『……ねえ、百』
「…うん」
『……不安?』
そう問えば、すぐに返事はかえってこなくて。
代わりに、抱き締められている腕の力がぎゅっと強まる。
しばしの沈黙が流れてから、百が小さく口を開いた。