第13章 ロストロングラブレター
リハーサルを終えた頃には、すっかり夜の22時を回っていた。
「お疲れさまー。遅かったね、疲れたでしょ。零が好きな彩宴亭の焼肉弁当、買っておいたよ!」
今日は、百の家に泊まる約束をしていた。部屋に入れば、百が嬉しそうに焼肉弁当を用意して待ってくれていて、そんな百の優しさに、一日の疲れがすーっと楽になっていく。
『さすが百ーっ!食べたいなあって思ってたの!もう、最高!ありがとう!』
「でしょ!そうでしょ!もっと褒めて!」
八重歯をちょこんと出して笑いながら、嬉しそうに駆けてくる百。百の後ろにぶんぶんと左右に揺れる尻尾が見える。わんこをお留守番させていた飼い主の気持ちがよくわかった気がした。
焼肉弁当を食べながら、録画していたNEXT Re:valeを見る。この時はああだった、次はこうしよう、なんて仕事の話をしていれば、あっという間に深夜2時を回っていて。
『あー、つい夜更かししすぎた。お風呂入ってくる』
零がぼやきながら立ち上がれば、百が隣でにやり、と笑った。
「モモちゃんと一緒に入っちゃう?」
『……っ!ばかじゃないの!?一人で入ります!』
「なんで?いいじゃん、一緒に入ろうよー!」
『無理!絶っっ対無理!!何言ってんの!?馬鹿じゃないの!?』
「……そんなに拒否んなくてもいーじゃん…っ」
捲し立てるように拒否をすれば、しゅん、と露骨に落ち込む百。さっきまでぶんぶん振り回されていた尻尾が、だらん、と垂れてしまったような。
そんな百を見ながら、零は思う。
―――こいつ……。
私が落ち込む百に弱いのわかってて、わざとやってるんじゃないかって思うくらい、あざとい……!
『………。いつか、ね……いつか……』
「本当!?いつか入ってくれるの!?」
『う、うん………』
わかりやすくはしゃぎだす百に、思わず笑みが零れてしまう。
ばれないように、くるりと背を向けてお風呂場へと早足で向かった。