第13章 ロストロングラブレター
「零、オレのことは気にしないでいいから。そりゃ、仕事だろうと零が誰かとキスしたりするのはヤキモチ妬くけどさ…でも、そんなの、始めから覚悟してたことだから。撮影、しっかり頑張っておいでよ!応援してる!毎週、絶対見るから!」
『……百……』
「だから、そんな顔しないで。笑って!あ、変顔しようか?」
『…っあはは……うん……ごめんね、笑う!…大丈夫だから…私、百のこと不安にさせないようするから…』
「零がそう思ってくれてるってだけで、モモは十分すぎるくらい幸せだよっ!零、愛してる!」
そう言って百は八重歯を出して笑いながら、わしゃわしゃと零の頭を撫でた。
―――いつだって、百は自分のことなんて後回しで。
いつだって、私や、千ちゃんや、周りのみんなを優先してくれる。
周りの人たちが、傷つかないようにって。笑っていられるようにって。
自分の気持ちを押し殺して、犠牲にしてまで、笑顔でいるの。
そんな百を。
私は、誰よりも優先してあげたいのに。
幸せでいっぱいにしてあげたいのに。
なんでいつも、うまくいかないのかな。
なんでいつも…百に無理をさせてしまうのかな。
『……私も……ちゃんと、百のこと…大事だし…好き、だからね』
「……え!もう一回、もう一回言って!録音するから!」
『……ばか』
大きな瞳をまん丸にして、慌ててスマホを取り出す百。
――録音なんて、しなくていいよ。百が求めるのなら、何回だって、隣で言うよ。
そんなことを、思いながら。
夜が更けていく。
陽が昇れば、また明日が始まる。
大切な人の笑顔を守ることが、私にちゃんと出来るだろうか。
そんな不安を流し込むように、アルコールと共に飲み込んだ。