第13章 ロストロングラブレター
万理の言葉に、信じられないといった様子できらきら瞳を輝かせながら台本を見つめる零。
想い合っていた幼馴染が離ればなれになり大学生になってから再会して再び惹かれあう、という王道の恋愛ものの少女漫画なのだけれど、美麗なイラストと細やかでリアルな感情表現から累計発行部数1000万部を突破し、絶大な人気を誇る作品だ。零も昔からこの作品のファンの一人で、漫画は全巻持っているし、アニメもブルーレイで全巻揃えている。どことなく自分の境遇に似ているところもまた、この作品に惹かれた一つの理由だった。
まさかそんな大好きな作品の実写化のヒロインを自分が演じることになるなんて。畏れ多い反面、今にも嬉しくて発狂してしまいそうな気分だった。
『ありがとうございます…ありがとうございます…!万理さん、この恩は一生忘れません…』
「あはは、俺は何もしてないよ。作者さんが、どうしてもヒロインを零ちゃんにやって欲しかったんだって。勿論、受けるよね?」
『……なんたる光栄……勿論です!全力でやらせていただきます…!』
「気合いの入れ方がいつもと別格だな……」
台本を手に燃え上がる零を見ながら、万理はくすくすと笑っている。
「それじゃあ早速台本に目を通してもらって。今週末には顔合わせだから。これから忙しくなるよ」
『頑張りますっ!!』
零は元気に返事をしてから、台本のページを捲る。
そして。
そこに書かれている名前に、大きく瞳を見開いた。