第3章 交錯する想い
『お疲れ様ー』
入ってきたのは、パピコを口にくわえている零だった。
「あ、零ねぇ!!」
『陸ー、今日も元気だねぇ』
寮生活にも大分慣れ、今ではIDORiSH7のメンバーたちとも普通に仲良く会話が交わせるようになった。メンバーは未だに緊張しているようだけれど。
「零さんお疲れ様です!!」
「お疲れ様です!!何か飲まれますか!?」
『……いや、あんたたちアイドルでしょ……気使わなくていいからね?それに、私より年上の人もいるんだから、敬語はなしで』
「え……そんな恐れ多い……」
『逆にやりづらいって!』
「OH!零!今日も最高に美しいでーす!!」
『……ナギは馴れ馴れしすぎね!』
零が抱き着いてこようとするナギに呆れていれば、一織が思いついたように口を開いた。
「零さんは、WEB番組などはやったことありますか?」
『WEB番組?んー、ないなぁ』
「ないんですか!?下積み時代も!?」
『うん、ない。一発目の仕事が、Re:valeのMVだったから』
零の言葉に、一同は唖然とする。
「一発目の仕事がRe:valeのMVって……」
「流石すぎて言葉が出ません……」
「零さんを参考にしようと思ったのが間違いでした。彼女は異例中の異例でした」
ずーんと落ち込む面々に、零が眉根を寄せながら椅子に腰掛ける。
『何、WEB番組やるの?』
「はい!宣伝活動になるかな、と思いまして!」
紡の答えに、零はパピコを口にくわえながら、言った。
『じゃあ今日の夜のNEXT Re:valeの収録で、それとなく告知しとくよ』
その唐突すぎる言葉に、六人はぴしゃり、と固まっている。
NEXT Re:valeといえば、ゴールデンの時間帯に放送されているRe:valeがメインMCを、零がサブMCを務めている超人気番組だ。
そんな番組で宣伝なんて、新人の駆け出しアイドルからすれば夢のまた夢のような話である。