第12章 未完成な僕ら
「あはは!ごめん、笑っちゃった!金属バット超似合うよ!超イケメン!」
「僕はモモみたいに素手じゃ零を守れないからね。これならホームランも打てそうだろ」
『あははっ……最高!』
ひとしきり笑い合ってから、百が涙で腫れた瞳を擦りながら口を開いた。
「……了さんの機嫌取るの失敗しちゃった」
「そう。次は成功する相手を紹介してあげるよ」
「誰?」
「僕」
「成功するかな?」
「失敗したことないだろ。……モモ、”未完成な僕ら”、聴きたい?歌いたい?」
「……。ユキはどうしたい?」
百の問いに、千は零に向かって口を開いた。
「零はどう思う?……零の意見も聞かせて」
『…私に聞くの?答えなんて、わかりきってるのに?』
「うん、零の口からちゃんと聞きたい。ねえ、モモ」
頷く百に、千が続ける。
「零、言ってよ。ここにいる僕の相方は、君のお願いならなんだって叶えてくれるんだ。違うか?」
千の言葉に、零は目に溜まっていた涙をごしごしと吹いてから、百の顔を見上げた。
『……聴きたい。百と千ちゃんの声で。百が受けた電気ショックを、私にも味あわせて。二人の声で、二人の歌で』
零の答えに、千と百は顔を見合わせてから、くしゃりと笑った。
『はい、次、千ちゃんの番』
「僕は……。モモと歌いたい。いつか。零、君の前で。あの日、止まってしまった歌の続きを。――零の前で、モモの隣で。まだ怖いけれど、いつか……。」
―――”千。
あの歌も、出会いも、さよならも
大丈夫。
神様にも虫にも愛されてるよ――。”
万の声が、聞こえた気がした。