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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第12章 未完成な僕ら




「あはは!ごめん、笑っちゃった!金属バット超似合うよ!超イケメン!」

「僕はモモみたいに素手じゃ零を守れないからね。これならホームランも打てそうだろ」

『あははっ……最高!』


ひとしきり笑い合ってから、百が涙で腫れた瞳を擦りながら口を開いた。


「……了さんの機嫌取るの失敗しちゃった」

「そう。次は成功する相手を紹介してあげるよ」

「誰?」

「僕」

「成功するかな?」

「失敗したことないだろ。……モモ、”未完成な僕ら”、聴きたい?歌いたい?」

「……。ユキはどうしたい?」


百の問いに、千は零に向かって口を開いた。


「零はどう思う?……零の意見も聞かせて」

『…私に聞くの?答えなんて、わかりきってるのに?』

「うん、零の口からちゃんと聞きたい。ねえ、モモ」


頷く百に、千が続ける。


「零、言ってよ。ここにいる僕の相方は、君のお願いならなんだって叶えてくれるんだ。違うか?」


千の言葉に、零は目に溜まっていた涙をごしごしと吹いてから、百の顔を見上げた。


『……聴きたい。百と千ちゃんの声で。百が受けた電気ショックを、私にも味あわせて。二人の声で、二人の歌で』


零の答えに、千と百は顔を見合わせてから、くしゃりと笑った。


『はい、次、千ちゃんの番』

「僕は……。モモと歌いたい。いつか。零、君の前で。あの日、止まってしまった歌の続きを。――零の前で、モモの隣で。まだ怖いけれど、いつか……。」





―――”千。


あの歌も、出会いも、さよならも

大丈夫。

神様にも虫にも愛されてるよ――。”





万の声が、聞こえた気がした。



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