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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第12章 未完成な僕ら




それから百は、ライブでの人手が足りない時に手伝いに行くようになる。


そして、Re:valeが結成して五年目に差し掛かる頃。


”未完成な僕ら”を歌っている最中に、照明が落ちてきた。

その時咄嗟に千を庇った万里が顔に大怪我を負ってしまう――それが、Re:valeが”未完成な僕ら”を歌った、最後のステージになった。

その事件が起きた数週間後。百の耳に届いたのは、万里が顔に怪我をして行方不明、ユキは音楽を止める――”Re:valeは事実上の解散だ”という情報だった。

それを聞いてすぐ百は千に会いに行った。
一か月通い詰めて、土下座をして頼み込んだ。

音楽を止めないで欲しい、と。
ずっと夢見てたことが終わってしまった百にとって、Re:valeが同じように終わるのは嫌だったから。ユキの夢まで終わるのは、嫌だったから――。



「……ユキは未だに、あの歌が歌えない。オレもユキの前では聴けない。だけど、”Dis one”を歌う前に、歌われない歌はかわいそうだってユキは言ってた。だから、もしかしたら、いつか……いつかって祈ってるけど」

「いつか?もう一度、聴きたい?それとも、千と歌いたい?」

「………」

『…百……』

「いなくなった彼は見つかったのかな?」

「うん……」

「なら、席を譲ればいいのに。どうして、千とモモが一緒にやってるんだ?席を譲れば、また聴けるよ。モモの切なる願いは叶うんだろう?」

「………」

「ははあ、譲りたくなくなっちゃったんだね。優先席に座って寝たふりする感じだ。お願い。誰も言わないで。ここをどけって言わないで」

「了さんは本当に性格が悪い……」

「モモは今、彼が一番邪魔なんだね。じゃあ、こういうのは?僕が彼をどこかに隠してあげるから、彼の仕事を手伝ってよ。興味が沸い――」

『黙れ……っ!!狐野郎……っ!!』


百の後ろで話を聞いていた零が、了の言葉を遮り怒鳴りつけた。
突然の大声に、了と百は目を見開いて驚いている。

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