第12章 未完成な僕ら
「……くそ……、なんで電話に出ない?」
何度掛けても、了にも零にも電話はつながらなかった。
嫌な予感が、どんどん確信へと変わっていく。
タクシーを飛ばしてもらい、ものの10分ほどで了の住むマンションに着いた。百は走ってエントランスをくぐりぬけ、了の部屋番号を押し、呼び出し釦を連打した。
「……出ろ……出ろよクソ……っ!」
すると、ザーッという音と共に、声が聞こえてきた。
≪……あれ?どうしてここにいるのかな?君のことは呼んでないんだけど≫
「……了さん!開けてよ!ねえ、今誰といるの!?」
≪…あはは!必死な顔、傑作だなあ!写真に撮って毎日眺めたいくらい!いや、写真じゃもったいないから、動画にしようか?≫
≪――百!?≫
確かに聞こえてきた、零の声。
百は震える拳で、どん、とエントランスのモニターを叩いた。
「……今すぐ開けろ。……零に指一本でも触れてみろ。あんたが大学の面接で嫌だっつった仕事をしてやる。もちろん、埋めるもん用意した上でだ」
それは普段の百からは想像もできないほどの、低い声だった。
怖い怖い、なんて愉快そうに笑う声が聞こえてきたのと同時に、エントランスの扉が開いたのだった。