第12章 未完成な僕ら
「やあ!よく来たね、零!待っていたよ!」
いかにも高級そうなマンションの一室。
何処か薄暗い雰囲気の室内を見渡してから、零は「お邪魔します」と言って靴を脱ぎ、丁寧に並べた。
「いやあ、君と二人でこうして乾杯ができるなんて夢のようだ。今日は零のために、最高級のシャンパンと肉を用意したよ。ほら、座って」
『……失礼します……』
「余所余所しいなぁ。モモはもっと懐っこかったよ?子犬みたいに。モモの代わりになるんでしょ?ほら、了さんって言って尻尾を振ってごらん。できないなら、鉄で出来た首輪をつけちゃうよ」
『………』
零は俯いてから、すう、と小さく深呼吸をしてから、満面の笑みをしてみせた。
『……了さんっ!』
「あはは!最高に可愛いなあ!モモがあそこまで君に入れ込むのもよくわかるよ!このまま手錠をかけてクローゼットに監禁して、閉じ込めてしまいたいくらい」
そう言った了の口元は弧を描いているのに、目は笑っていない。
背筋がぞっと凍るのを感じる。けれど、これくらいで怯んでちゃいけない。
百が今までやってきてくれた事に比べたら、こんなのどうってことないはずだ。
零は目一杯のアイドルスマイルで、目の前の男に向かってほほ笑んだ。