第12章 未完成な僕ら
「………おかしいな…。了さん、何で電話に出ないんだろ」
収録を終えた百は楽屋で一人、スマホに向かって独り言を呟いていた。
ここ三日ほど、了と連絡がつかないのだ。いつもならワンコールで出る癖に、何度電話を掛けても、応答がない。
<了さん、何で折り返しくれないの?今日、了さんの家に遊びに行く約束覚えてるよね?お土産たくさん持っていくから、楽しみに待っててね~☆>
早々とラビチャを打ってから、了へと送信する。
ラビチャを閉じてから、百ははあ、と大きくため息を吐いた。零と喧嘩して以来、カラフルだった世界が、突然白黒になったような、そんな憂鬱な気分だった。
――別に、了さんが電話に出ないのはどうだっていい。
堪えているのは、零が電話に出てくれないことだ。
あれ以来、勿論会えていないし、電話にも出てくれない。ラビチャだって、「百が月雲と付き合いを止めるって約束するまで知らない!」と来て以来、何を送っても全部既読無視を決め込まれてる。
こんな時に限って、NEXT Re:valeの収録は先週に特番をやっちゃったから今週はお休み。しょっちゅう一緒になるバラエティや雑誌の撮影も、今週に限って一本もないなんて。神様は意地悪だ、なんて、自分の間の悪さを神様に八つ当たりしたりなんかして。
もちろん、零を怒らせてしまったのは、自分が悪いのもわかってるんだけど…。
でも、なんとか了さんをツクモの社長に就任させることだけは避けなければいけない。
けれど。
これ以上了さんと関われば、零はオレをもう許してくれないかもしれない。もし。万が一。そうなってしまったら……?
……想像するだけで、内臓まるごと全部吐きそう。