第12章 未完成な僕ら
≪何時に帰るの?迎えに行くから時間教えて≫
『……。やだ。月雲と会わないって約束するまで百とは会わない』
≪は?なんでそうなるの?零には関係ないだろ!?了さんとは、事務所との兼ね合いも――≫
『わかってるけど!おかりんも言ったんでしょ!?もう会うなって…こんなにみんなが心配してるのに、なんでそれでも会いに行こうとするの!?』
≪オレにだって、ちゃんと考えあるんだ…!頭ごなしにオレが悪いみたいに言わないでよ!≫
『百が悪いなんて言ってないじゃん!!なんでそんな頑固なの!?』
≪零に言われたくないよ!ていうかさ、なんでオレに一言もなしに二人で会ってるの!?いくらユキでも、こそこそ二人で会われたら良い気しないよ…!≫
『は!?千ちゃんは百のこと心配して私に相談してくれたんだよ!?千ちゃんが話してくれなかったら、私は百がどんな危険なやつと会ってるかも知らずにへらへらしてたんだよ…そんなこと、想像するだけで気がおかしくなりそう!!』
≪巻き込みたくなかったんだよ…!心配かけたくなくて…っ≫
『じゃあもし百に何かあったら、何も知らなかった私はその時どんな気持ちになるか考えた!?ねえ、自分だったらどうなの!?』
≪………っ≫
「……零、ちょっと落ち着いて」
千が零のスマホを持つ手を優しく掴んで、首を横に振った。
『………。これだけ言っても、会いに行く気?』
≪………≫
百からの返事はない。
零ははあ、とため息をついてから続けた。
『…よくわかった。考えが変わったらまた連絡して。それまで会わないから』
≪っ零、待って――≫
百の声を遮るように、零は通話終了のボタンを押した。
隣では、千が苦笑しながら零を見つめている。
「……ごめん……僕のせいだ」
『千ちゃんのせいじゃないよ。百が頑固すぎるのが悪い』
「……零に会わないなんて言われたら、モモ、死んじゃうかも……零、他に方法を考えよう。会わないじゃなくて……そうだな、接触禁止、とか…いや、それはそれで…」
『こうまで言わないと考え直してくれないもん……』
「……。僕もモモに会ったらちゃんと謝る。躍起にならずに、冷静に話すよ。わかってもらえるように」