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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第1章 泡沫のトロイメライ




《なんでそんなに頑固なの!?心配で心配で仕方ないモモちゃんの気持ちも少しは考え》

『わかってる、わかってるよ、百が心配してくれてるのはわかってるの!いつもすごく助けてもらってるしありがたいけど、引越しの手伝いは大丈夫。荷物はもう昨日のうちにほとんど運んでもらったし、今日持っていく荷物なんてスーツケース一つくらいだもん』

《じゃあそのスーツケース、オレが持って行ってあげる!》

『いや、いらない。社長が迎えに来るし』

《なんだよ、冷たいなあ……せっかく零のために早起きしたのに》

『……ていうかさ、引っ越しは昼頃って言ったよね?まだ朝の5時前なんですけど』

《…あれ?そうだっけ?》

『………』


てへ、なんていつものお茶目な声が聞こえてきそうな雰囲気に、寝起きでぼーっとしていた頭は徐々に覚醒し、電話越しの相手に苛立ちが募っていく。零はすぅ、と息を吸い込み、本日二度目の大声を出した。


『……百のバカ!!!!せっかく久し振りにゆっくり寝れると思ったのに!!』

《あーっ、ごめん!!ごめんって!!何でもするから許して!!ね?だから怒んないで、ハニー!!》

『うるさい!そんなのいつもじゃん!貴重な睡眠時間返してよ、バカ百』

《うぅ……ごめん……オレ、めちゃくちゃ反省してるから……》


しゅん、と露骨に落ち込む様子が容易に想像できるような声音に、零は小さくため息を吐いてから続けた。


『……いいよ、心配してくれてたんでしょ』

《うん……今日は大丈夫かな、って、朝起きると心配になって、つい……》

『ほんと心配性だよね、百は』

《こんなに心配するのは、零とユキだけだよ!?》

『はいはい、ありがと。一人で帰ることなんてないし、携帯変えてからは悪戯もなくなってる。警察もこまめに巡回してくれてるし、もう大丈夫だよ』

《そっか……でも、油断は禁物だよ!ストーカーなんて、何しでかすか分かんないんだからっ!》

『うん、ちゃんと用心するから。今日も収録でしょ?私のことは大丈夫だから、仕事に専念して』

《そうだけど…。何かあったら電話してよ!オレが収録中とかで出れなかったら、おかりんに電話して!絶対!絶対だよ!?》

『…わかったから。そんなに心配しなくても大丈夫、事務所の寮に入るんだから。一人じゃないし』
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