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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第12章 未完成な僕ら




―――月雲……了?



先日、楽屋の前で奇妙な男に渡された名刺に書かれていた名前。


”何か困ったことがあったら連絡してよ。誰にも言えないようなことでも、僕なら力になれる。そう、君の大切なモモや、"TRIGGERの幼馴染"のことでも!”

彼の言っていた言葉を思い出す。
含みのある言葉ひとつひとつも、冷たい笑顔も、全てがどこか不気味で狂気じみていた。

この人は危険だ、と。直感で感じた。

そんな男の元へ、百が行ってしまう――そんなこと、想像しただけで恐怖と不安で押しつぶされそうだった。



「……零?どうかした?」

『え……あ、ごめん!うん、私が絶対止めるよ。何としてでも、百を止める』

「ありがとう、零。百に行くなと言うだけでいいんだ。僕から言うのと、零から言うのとじゃ、また違った重みがあると思うから」

『……うん、わかった。……この前のパーティでさ、星影さんと仲良くしてる振りしててって言ったの、月雲に会わせないためだったんだね』

「うん。月雲は零のことを気に入っていたからね。モモが絶対に会わせないようにって…今までも何度かあったんだけど、その度に必死に止めてたよ。愛されてるね、零」

『……。…百……』

「零を巻き込みたくないって気持ちは僕も一緒だ。でも、零にもちゃんと知っておいて欲しい。あの男と関わることがどんなに危険か。零には知る権利があると思った」


千がそう言ったときだった。
零の電話の着信音が鳴る。


『あ……百からだ』

「僕といて全部話を聞いたこと、言っていいよ」


頷いてから、零は電話に出る。
通話口から聞こえてきた百の声は、落ち込んでいるような、どこか元気のない声だった。


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