第12章 未完成な僕ら
「ユキは星影、オレはツクモと、うまくやってこうっていうのは、一緒に話し合って決めたことでしょ。お互い役割を果たしてきただけだ。騙す騙さないなんて話の次元が違う。そっちこそ、二度とオレの邪魔をしないで」
「……。おかりん、今すぐテキーラ持ってきて。素面でいたら発狂しそうだ」
「無理です、仕事前です」
岡崎の冷静な突っ込みに、千は続ける。
「あいつを一人でコントロールできると思ってるのか?」
「了さんは本来飽き性で、自分が楽しみたいだけの人なんだ。他の楽しみを見付ければ、こんなことは止める。了さんの思惑を潰したなら、今度は機嫌を取っておくべきターンだったんだ…。ユキは了さんを怒らせただろ?」
「なんでわかる?」
「怒りスタンプと知恵の輪のスタンプが、五時間に渡って交互に送り続けられてきた。知恵の輪って何?」
「さあ。心当たりない」
「とにかく、これからは機嫌を取って、慎重に舵取りしていかなきゃ。週末、謝りに行ってくるから…」
「は?謝る?なんのために僕が出て行ったんだ?」
「こっちが聞きたいよ!?」
「……どうして言葉が通じない動物みたいな振る舞いをするんだ」
「動物ってどういう意味だよ!?」
「これ以上あの男と付き合うつもりなら、零との付き合いは止めろ」
「は!?なんでそこで零が出てくるわけ?」
「モモにとって零は大切な彼女なんだろうけど、僕にとって零は大切な妹のような存在なんだ。あんな頭のおかしい奴と付き合っている君に、零を安心して預けることなんてできない」
「どうしてそうなるの!?零は関係ないだろ!?」
「関係ある。現にあの男から零を紹介しろ、としつこく言われてたじゃないか!!」
どんどんヒートアップしていく二人の間に、岡崎が慌てて仲裁に入る。