第11章 夏の日の陽炎
「そうそう。楽のパパにも協力してもらった」
「親父に?」
「オレたちにツテがない大女優さんとか、仲介してもらったりしたんだ。楽のパパもこの件じゃ焦ってた」
「仲介してもらってどうするんですか?」
「土下座でもウインクでもして説得するよ。ユキが大和に約束したんでしょう。スキャンダルくらい、オレたちが守ってやるって」
百と千が各々行動してみた結果、なかなか折れない人もいた。
千葉志津雄と過去に衝突があって、感情的になっている人。その人たちの怒りをおさめるために、頭を下げてくれないか、と千葉にお願いした千だったが、”二度と敷居をまたぐな”と言われて追い出されてしまったらしい。
けれど、大和なら。
大和がお願いすれば、千葉も言うことを聞いてくれるかもしれない――。
千がそう提案すれば、大和は俯いた。そんな大和に、千は続ける。
「電話してみて」
「…今ですか…?」
「うん」
「…無理ですよ…聞くわけない…」
「あの人だって、息子のために、花を贈る意外のこともしたいはずだ」
千の言葉に、天が続く。
「…かけて」
「九条……」
「キミのために、必ず動くよ。きっと本心では、家族に戻りたがってる。自分の責任で生まれたキミの窮地を、無視できるはずない。キミを守るために、絶対に頭を下げる」
みんなの励ましに、震える手で電話を握る大和。
そんな大和の手が、ひんやりと冷たい手のひらが優しく包んだ。
「…っ!?」
大和が顔をあげれば、震える大和の手を両手で握っている零がいて。
『大丈夫。私たちが側にいるよ。……全部、ぶつけれてやればいい。小さい時に失った憧れも、甘えも、悲しみも。正面から向き合って!大和くんが大和くんを好きになれるように。自分を誇りに思えるように』
「……、零ちゃん……っ」
「おい、おっさん!顔赤いぞ!」
「…っうるせえ!いいとこなんだから邪魔すんな!」
三月と大和のいつも通りのじゃれ合いが見れたところで――大和は、千葉志津雄に電話を掛けた。
そして。
千葉志津雄は無事、大和の願いを聞き入れてくれた。
相手の方が許してくれるかどうかはわからないが、許してもらえるように全力を尽くす、と――そう、約束して。