第11章 夏の日の陽炎
「そうだ!ひとつ思い出したんだけど……」
「…っ殺してやる…!」
「許して!堪忍して!!」
咄嗟に演技を始める千と百に、了は続けた。
「お取込み中失礼。千は星影と親しいみたいだけど、たれ込んでも、すぐ僕にわかるからね。星影にはスパイを忍ばせてるんだ。それでは、かんかんかんかーん!第二ラウンド、どうぞ」
そう言い残し、了はバタン、と扉を閉めて出て行った。
「…星影にスパイ?」
「…っ、むかつく!ラウンド開始のゴングは一回なんだよ!四回は終了の時…!」
「よくあんな頭のおかしい男と付き合ってられたな…。だから、あれほど言っただろう。変な連中と関わるなって。だいたい、なんですぐに話さなかった?」
「撮影もあるし、作曲もあるから、煩わせちゃ悪いと思って…。暴露メンバーが誰かわかったら、言うつもりだったよ」
「…零には?」
千の問いに、百は罰が悪そうに俯いた。
「……零には、隠し通すつもり」
「どうして?巻き込みたくないから?…僕が零だったら、憤慨するね。彼氏が自分に黙ってこそこそ裏で動いていたら」
「…っ、仕方ないだろ!?零には心配かけたくないんだ!了さんは零を気に入ってる…前に、ユキにも言ったろ?了さんにうまくカモフラージュさせるために、星影の人と話してるところに連れて行って、って」
「それはわかるよ。あの男と零に接点を持たせるのは僕も反対だ。でも、それとこれとは別。この話はちゃんと言うべきだ」
千の言葉に、俯く百。
「じゃあ、一つ聞くけど。零がモモに黙って、誰かとこっそり裏で動いてたらどう思う?心配かけたくない、巻き込みたくないって理由で」
「…っ絶対やだ!!そんなの無理!!」
「ほら」
「あ……」
「大丈夫だよ、モモ。零のことは、モモと僕で守ればいい。バンもいる。大丈夫、安全だよ」
「ユキ……。超イケメン……!」
「知ってる。そうだ、デモが出来たよ。聴くでしょう?」
「出来たの!?撮影で忙しいのに!?えらいじゃん!もっと押すかと思ってた!すごいなー!めちゃくちゃ聴くの楽しみだよ!やっぱり、ユキは天才だね…!」
「ふふ……まあね」
「機嫌いい!自信作なんでしょ!」
「今、自信作になったんだよ」