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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第11章 夏の日の陽炎





――翌日。


徹夜でMissionの主題歌のデモテープを仕上げた千は、ふらふらと揺らつく体でなんとか楽屋の扉に手をかけた。


「おはよう、モモ……」


ガチャ、と扉を開けた、瞬間だった。


「……楽屋にまで来るなよ!早く出てけって!ユキにバレるだろ!」


百の、怒ったような声が耳を掠めた。


「――大好きなユキには言えてないんだ?じゃあ零にも?あなたたち二人の身の安全を守る代わりに、後輩の情報売りますねって」

「………」


聞こえてきた声に、千は息を潜めたまま耳を澄ませた。


「ユキと零を納得させるのは無理だよ…。ねえ、どういう形で千葉サロンを暴露する?週刊誌程度じゃないんでしょ。暴露本?記者会見?音声が欲しいってことはVTR作るんだろ。どっかの番組もう抱き込んだの?」

「今慎重に決めてるところだよ。集まった材料次第で、なんとでもなるかな。二階堂大和の生出演があれば面白いけど」

「そこまで落とせるかはわかんないよ。ビッグネームの共謀者が誰かわかれば、大和を説得しやすいんだ…けど……?」


言いかけてから、百は扉の前に立っている千の姿にぎょっと目を見開いた。


「……なんの話?」


無表情で問う千。
百と話していたのは、月雲了だった。


「やあ!何度か会ったことがあるね!ツクモプロの月雲了だ!モモはいつも、君の自慢話ばかりだよ!」

「モモ、なんの話だ?」

「えっと……ゲームの話だよ!最近はまってて……」


ごまかそうとする百の言葉を遮って、了が口を開く。


「この先の君と零の立場を守るために、千葉サロンの暴露を手伝ってくれるんだよ。詳しく言うと、二階堂大和を切り売りしてもらう」

「…っユキに言わなくたっていいだろ!?」

「揉めるところが見たくて」


了はそういって、にっこりと笑った。

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