第11章 夏の日の陽炎
「……え?」
目を見開く大和に、千は続ける。
「メンバーに電話しな」
「…今?ここでですか?」
「そうだよ。タイミングが大事でしょう」
「だけど……でも…」
「大和くんだってしてるじゃない。やりたかった、一生懸命。不器用な大和くんが、苦手な僕の前で、スマホを持つ手を震わせながら、一生懸命。仲間のためにさ。勇気が必要だったろ。頑張ったね」
「千さん……」
「その思いが届かない子たちじゃないよ。みんな、君の帰りを待ってる。安心させてあげな。電話して、明日帰るって言いなさい。それだけでいいから」
千の言葉に、大和は震える手で、三月に電話を掛けた。
「……もしもし、ミツ。あの…俺だけど…。…明日帰るから…。おまえらも、一緒に帰ってこいよ…」