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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第11章 夏の日の陽炎




収録を終えた、夜。

大和は一人、千の家への帰り道を歩いていた。


「……もう、だめかもな……。これ以上、あいつらを困らせる前に俺の方から……辞めるって、言うべきなのかな」


ぽつり、と独り言のように呟けば。


「――大和!これから帰り?」


振り返れば、そこには百がいて。


「百さん…。はい、帰るところです」

「今ユキの家にいるんだって?いいなー!」

「すみません…。そっちではミツとイチがお世話になって」

「いいよ、いいよ。ケンカしちゃったんだって?一緒にやってればケンカくらいするよね。でもケンカは正面向いてやったほうがいいよ!今夜、のんびり、うちにケンカしに来ない?三月も一織も待ってるから」

「あはは…大丈夫です。喧嘩とかじゃないんで…今日も普通に仕事してましたから。ミツの方はなんて言ってるか知りませんけど…」

「三月は大和から話して欲しそうだったよ。いろんなことをさ」


百の言葉に、大和は黙り込む。


「長い間ケンカしてるのもったいないから、うちにおいでよ!話し合ってみたら?お寿司とってあげるから!ね!」

「………うるせえな!」


突然の大和の怒声に、百の肩がびくりと揺れる。


「あんたら二人して構わないでくだだいよ!余計ごちゃごちゃしたじゃないですか!」

「ご、ごめん。でも……」

「正面からケンカって、あんたらはどうだったんですか!?できなかったから、声もでなくなったんでしょ!?だいたい、長引かせたのだって百さんだったんじゃないですか!?自分で情報通っていう百さんが、万理さんがうちの事務所にいることを知らない筈がない。知ってて言わなかったんだ。違いますか!?」


大和の捲し立てるような言葉に、百は悲しそうに眉を下げた。


「……。……本当に知らなかったよ……」


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