第11章 夏の日の陽炎
『ただいまー』
零が玄関のドアを開けて、小さく呟けば。リビングから陸を筆頭にナギと壮五と環がばたばたと駆け寄ってきた。
「おかえりなさい!」
『あれ。今日は遅くまでみんな一緒にリビングにいるんだね?』
「うん……なんとなく……」
どこか寂しそうな四人に、零は困ったように笑う。
『どしたの、暗い顔して。ほら、ナギ。まじこな見ないの?』
「OH……ここなを見ても楽しくありません……目を閉じたら悲しい夢を見そうです」
あんなに心酔しているここなを見ても楽しくない、だなんて。ナギの精神状態が急激に心配になってしまう。
「僕もいろいろ、今回のことに考え込んでしまって…」
そんなナギの隣で、壮五が悩ましげに言った。そして、陸も続く。
「俺も……。夜は一緒に一織といることが多かったから…。それで、リビングに来たら三月と大和さんがおしゃべりしててさ、当たり前にみんな一緒だった。でも、本当はバラバラの家にいてもおかしくないんだよなって……」
『陸……大丈夫だよ!バラバラになんてならないから!』
「そーだよ!零りんの言う通りだよ!俺は出てかねーぞ!」
「そうですよ!ワタシも出て行きませんよ!」
「オレだって!」
環、ナギ、陸が続く。
そんな三人の後に、壮五が悩ましげに続けた。
「そうか……収入的にはもう自立できるもんね…」
「……なんで、あんたは僕も出てかねーつって合わせねーんだよ!!」
「ソウゴKYです!一体感、大事ですよ!」
「壮五さん、出て行かないで!」
「ぼ、僕も出て行かないよ……そういう意味じゃない、一体感あるよ。大和さんは、これをきっかけに寮を出て行ってしまいそうで……」
壮五の言葉に、一同が黙る。
沈黙を破ったのは、陸だった。
「……オレ、一織に電話してみる!」