第11章 夏の日の陽炎
百の言葉に、三月はムッとした表情で窓の外を睨みつけた。
「なんかむかつくなあ……。中指立てとこ」
「こらこら、やめなさい!三月が変に言われちゃったらやだよ。今回はボツか、面白記事になるんじゃない?」
「でも、家の中まで撮ろうとするなんて……」
「あはは、零とオレの熱愛疑惑を決定的なものにする瞬間でも撮りたいんじゃない?」
「決定的瞬間、っていうと…抱き締めてるところとか、キスしてるところとかってことですか!?」
「うん、夜な夜なお互いのマンションに入っていくところとかね。オレ達、しょっちゅう一緒に行動してるけど、一緒にいるとこ撮ったって、仲の良い友人って言われちゃえばそれまでじゃん。千も一緒にいることが多いし」
「確かに……。二人の熱愛報道で上がる写真って、いつもご飯やさんとかで一緒に食事してるだけの写真ですもんね。千さんと三人での写真も多いし。こじつけようとしてるのが見え見えですよ!」
三月がそういえば、百が口を尖らせた。
「まあ、本当はラブラブ具合を見せつけてやりたいくらいなんだけど。零の可愛いちゅー顔とか照れてる顔を全国ネットに晒すなんて、絶対嫌だもん。誰にも見せたくない!」
「「………え?」」
百の言葉に、ぽかん、と口を開ける二人。
「じゃ、ごはんにしよっか!三月も一織もありがとー!」
明るくそういってキッチンへ向かっていく百。
三月と一織は、知ってはいけないことを知ってしまったような、そんな罪悪感に苛まれていたのだった。