第11章 夏の日の陽炎
「……あれ?雷?今、外光りませんでしたか?」
一織がそう言えば、百は洗濯物を仕分ける手を止めて、窓の方を見ながら口を開いた。
「おー、久しぶり。三月、ベランダに背中向けて近づいてみ。壁ドンしてあげる」
「壁ドン!?えっ、ちょっ……」
「今夜は帰さないぜ……」
百は甘い台詞を囁きながら、驚く三月に壁ドンしてみせた。
「百さん!?兄さんに何を……。……!?」
今度は白い光が、何度もピカピカッと視界を掠めた。
「……っ、光が連続で……これはカメラのフラッシュですか!?」
「そうそう。もういいよ、三月。外見て、手え振って」
「外に誰かいるんですか?こっちからは真っ暗で何も見えないけど…手え振ってっけど見えてんのかな」
「光らなくなりましたね…もしかして芸能記者?」
百は慣れた様子でカーテンを閉める。
「そそ。ユキなんかキレて、カーテン閉め切って一か月過ごしてた。その後、反動でカーテン全部捨てちゃってさ」
「今もカーテンないんですか!?」
「いやいや!おかりんが慌ててすぐにつけたよ。抗議文送ってからは、落ち着いたかな。難しいよね。売れてない頃は、見て見て!こっち見て!って願ってるけど、こういう風になってきちゃうと、ありがたいっすなあ、とは、純粋に思えなくなってきちゃうかなあ…」
困ったように笑いながら言う百に、一織が口を開く。
「そう言えば、Re:valeさんは記事を書かれることが多いですよね。不仲説や、零さんとの熱愛報道もそうですが…」
「うちは事務所が小さいからねー。零もそう。ネタに困ったらRe:valeと零は鉄板ですよって、記者さんにも言われた。にゃはは」