第11章 夏の日の陽炎
「ごはん作り失敗しちゃったの?待っててね。今、零ちゃんとご飯作るから」
「零ねぇ、壮五さん、おかえりなさい!……零ねぇと壮五さんがごはん作ってくれるんですか……?」
「うん。今、万理さんと零ちゃんと夕食の材料の買い物に行ってきたから。安心して」
『待っててね!』
笑顔で言う壮五と零に、三人の顔は青褪めていく。
「うぅっ……エイリアンに侵略され、虫よけのブラックホールを生み出され、ラスボスはプール・オブ・ブラッド&ダーク・マターです……」
そんなナギたちの気など知らずに、仲良くエプロンをつけながらキッチンに立ち始める二人。そんな二人を、こっそり後ろから覗いてみれば。
「今日はペペロンチーノだから、はじめにオリーブオイルと唐辛子を炒めて……」
どばどばと唐辛子を炒めはじめる壮五。
『えーと……パスタってフライパンで炒めればいいんだっけ?』
乾麺のままパスタをフライパンで炒めはじめる零。
「オー・マイ・ゴッド………」
あまりの惨劇に、目を瞑るナギ。
頭を抱える三人の視線を背に、壮五が隣で作業する零に言った。
「あ!零ちゃん、駄目じゃないか、そのまま炒めたら。パスタは鍋にお湯を張ってから、茹でるんだよ」
『そうなの?ごめん…間違えちゃった』
「ううん、いいよいいよ。失敗は誰にでもあるから!僕が代わりにやるから、零ちゃんはこっちをやっておいて」
『うん、ありがとう壮ちゃん!……って、これ唐辛子いれすぎじゃない?』
場所を交代した二人。
「あ!!零ねえと壮五さんがうまい具合にお互いの間違いに気づき始めたよ!!」
「このままうまくいくんじゃね!?」
そんな期待を込めて、陸と環が二人を見守っていれば。
「塩と唐辛子を入れて茹でてっと……あ、少し唐辛子が足りないかな。もうひとかけ足しておこう」
『唐辛子入りすぎだよこれ……砂糖いれればマシになるかな?いや、お酢?いいや、どっちもいれちゃえ』
残念ながら、陸と環の期待通りにいくことはなかったのだった。