第11章 夏の日の陽炎
その頃、寮では――。
「ナギっち、これ……ヤマさんがいつも作ってるラーメン作ったから……」
環が差し出したラーメン(?)に、ううっと頭を抱えるナギ。
「……っ、うぅっ……それはドンブリをハイジャックしたエイリアンです……」
「すげーのびちっただけだって!」
環の作ったラーメンは、麺が汁を吸いこみ信じられないくらい太くなって渦を巻いている。
「なにそれ、脳みそみたい……。ほら、ナギ!三月がいつも作ってくれたドーナッツ!」
そう言って陸が差し出したドーナツ(?)は、炭のように真っ黒に焦げていた。
「……っ、うぅっ……それはビッグバンの時に出現したブラックホールです……」
「宇宙が始まったりしないよ!焦げてるところ剥けば大丈夫!バナナの皮と同じ!ね?」
「無理だよ、炭の匂いすんもん…。りっくんこれ、洋服ダンスにいれとけよ。虫除けになるかも」
「環、使う?」
「絶対やだ」
「……うっうっ……」
泣きだすナギの背中を、優しくさする陸と環。
「泣かないで……もうすぐ零ねぇも帰ってきてくれるし!」
「…うっ……零が帰ってくるのはとてもHappyですが……彼女の料理はDestructive!壊滅的です……!うぅっ……」
「……ナギっち、それ絶対零りんの前で言うなよ。元気出せって。ヤマさんとみっきーといつも一緒だったからへこむのわかるけどさ……」
「大和さんの撮影が終わるまでみんな帰ってこないつもりなのかな……」
三人が頭を悩ませていれば、がちゃ、と玄関のドアが開く音が聞こえてきた。
「ただいま」
『ただいまー』
帰ってきたのは、壮五と零だった。
ナギの前に置いてあるひどい料理の残骸に、壮五と零は顔を見合わせる。