第11章 夏の日の陽炎
百の家に到着してから、三月と一織が事情を話してくれた。
三月と大和が殴り合いの喧嘩をして、互いに家出をしてきたらしい。行くあてもなく飛び出したがために、あんな場所で彷徨っていたのだとか。
「そっか……じゃあ、落ち着くまでしばらくうちにいなよ!」
百の言葉に、三月と一織は目を見開いた。
「え!?そんな、悪いですよ……!」
「いいからいいから。ね、零からも言ってあげてよ」
『そうそう、先輩にはうんと甘えなきゃ!万理さん達には私からちゃんと言っておくから』
三月と一織は、申し訳なさそうに顔を見合わせる。
零の携帯が、陸やら壮五やらからの着信とラビチャでうるさく鳴っていた。三人が家出をした件で慌てているのだろう。
『陸たちが心配だから、私は帰るね。百、二人のことよろしくね』
「うん、任せて。三月、一織。零のこと送ってくるから、くつろいで待ってて」
「本当、すみません……二人にまで迷惑かけて」
「いいのいいの!じゃあ、いってきまーす!」
『この家の冷凍庫にあるものだけは食べちゃ駄目だよ!冷蔵庫に入ってるものもちゃんと賞味期限見てね!じゃあ、また来るから!』
ばたん、と閉じた扉を三月と一織は悲しげに見つめていた。