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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第11章 夏の日の陽炎




『……それよりお腹空いたよ、百』

「え?あはは、可愛いなあ、本当。今日は何食べる?肉?」

『百といると肉ばっか。千ちゃんがいないとバランス取れないよね』

「零だって、肉好きだろー。あ、そうだ!じゃあ今日はオレん家でお魚食べよう!冷凍庫に大事に取っておいたお魚が――」

『はあ!?あれまだ取ってたの!?前に捨てろって言ったじゃん!』

「なんで!?まだ食べれるもん!冷凍してあるから平気でしょ!?」

『馬鹿じゃないの!?あれ取りに行ったの去年の春だよ!?ああ、駄目。本当駄目、この人。今日という今日は冷凍庫にあるもの全部捨てよ』

「全部!?オレのお魚……!!……零と一緒に釣りに行った時の思い出のお魚たちだったのに……」


うるうると瞳を潤ませながら残念がる百に、零ははあ、とため息をついてから仕方なさそうに口を開いた。


『……また取りに行けばいいでしょ』

「え……一緒に行ってくれるの?これからの時期暑いよ?零の嫌いな紫外線、全開だよ?」

『……いいよ、別に。ちゃんと日焼け止め塗れば』

「本当!?やったー!」


落ち込んでいた姿はどこへやら。
瞳をきらきらと輝かせて、ひまわりみたいに笑う百を見ていれば、思わずつられて表情筋が緩んでしまう。



「――零ちゃん、百くん、お疲れ様」

「うわ…っ!!バンさん……!!お疲れ様です!!」


後ろから掛かった万理の声に、百は慌てて頭を下げる。


「……百くん、そんなに恐縮しないで。今日も零ちゃんのこと、頼んじゃって大丈夫かな?」

「はいっ…!任せてください!零さんのことは責任もってオレが送り届けるんで!!」

『……零さんて……』

「あはは……(なんか、本当に一人娘を彼氏に託す父親のような気分だ……)。ありがとう。よろしくね」


万理に頭を下げてから、着替えやらを済ませた二人は百の車に乗った。

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