第10章 空を覆う雲
「……挿れるよ……っ」
そう言って、呼吸を整えるように息をしてから、そのまま中へとゆっくり押し込んだ。奥に入れば入るほど、ナカがまとわりついてきて、つい自分の声じゃないみたいな恥ずかしい声が漏れる。
「………っ、」
奥に挿し込んだだけなのに、既に吐精感に襲われて、思わず歯を食いしばる。まさかこんなに早くイキそうになるなんて、今までの自分じゃ考えられない。久しぶりすぎるから?いや、違う。こんなに気持ちの良いセックスは知らない。
本当に好きな相手とする行為は、こんなに気持ちのいいことなのかと驚きを隠せない。なんかもう、このまま、心も体も彼女に溺れて、溶かされてしまいそう。
一旦呼吸を置いて落ち着いてから、ゆっくりと腰を動かす。
彼女のナカの感覚を堪能するように、緩めたり、速めたりすれば、ずぷ、といやらしい音が聞こえてくる。
『っぁ……っ……んんっ……!』
甘く啼く彼女の声も、肌が重なり合う音も。快感に顔を歪める彼女の顔も、揺れる白い胸も。すべてが体を、頭を刺激して、もう、冷静には何も考えられない。
彼女の細い腰を掴んで、本能のままに腰を動かす。あまりの耐え難い快感が次から次へと襲ってきて、おかしくなりそうだった。
『ぅ、んっ……ぁぁっ』
「……っ、ごめん……っ、も、イク……っ」
何度か強く打ちつけてから、意識やら血液やら体内の全てがそこに集中して、情けない吐息と共に彼女の最奥で熱を吐き出した。
感じたことのない快感に、息を整えながら思う。オレの初めては、紛れもなくこの人だ。初めてしたセックスとか、そんなもん関係ない。誰が何と言おうと譲れない。オレの初めては、全部、全部零だ。
肩を上下させながら息をする零を、ゆっくり抱き締める。汗ばんだ体が密着してぺたぺたするのに、それすらもどうしようもなく愛おしい。