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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第10章 空を覆う雲



「ちょ、ちょっと零、離れてよ……」

『え、なんで?いつもモモからくっついてくるじゃん』

「いやいや…!それはわけが違うでしょ?」

『なにが違うの?』

「なにがって……ねえ、零。オレだって男だよ?わかってる?これでも我慢してるんだよ(手を出すことを)」

『なんで我慢するの?(くっつくことを)』

「なんでって…!零に嫌われたくないからに決まってるだろ!」

『なんで嫌うの?意味わかんない、我慢なんてしなくていいのに』


瞬間。

ぷつん、と張り詰めていた糸が切れたみたいな音がして。

気がつけばオレは、零を組み敷いて、驚く零の顔を見下ろしてた。



『ど、どしたの……百?』

「………。……零はずるいよ」

『ずるい…?』

「オレの気も知らないで……」

『え?なに、私何かした?』

「何もしてない。してない、けど……。男はみんな狼だって言ったろ!オレだって……その、例外じゃないの!」


オレの顔を見上げる零の顔が、みるみるうちに桃色に染まって行く。押さえつけている両手が、ぴくりと動いた。零はオレから視線を反らしてから、小さく口を開いた。


『……そ、それくらい…わかってるもん』

「わかってない!全然わかってない!!」

『わかってるよ!!』


零の声が、オレの声を強く遮る。
突然の大きな声に、驚いて目を見開いた。
零の瞳は濡れていて、赤く上気した顔はいつもより生々しくて、色っぽい。そんな彼女の姿に思わずこくり、と喉が鳴る。

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