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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第10章 空を覆う雲




「………はあ」


やり場のない気持ちをため息と共に吐き出してから、お風呂場のドアに寄りかかる。

―――理性を抑えるってことがこんなに大変なことだったなんて、25年間生きてきて初めて知った。

そりゃ、男だから性欲はそれなりにあるし、今までだって女性経験がないわけじゃない。でも、どちらかというと自分は欲がない方だと思ってた。迫られて、流れで、なんてのもあったけど、経験人数なんて片手でも余るくらいだ。

学生時代はサッカーに夢中で、夢を挫折してすぐにRe:valeに出会った。それからはユキと必死に毎日を生きてきて、やっとの思いでデビューして。
正直、恋だの女だの、そんなことにうつつを抜かしてる時間がなかった、っていうのもある。

けど。

零に出会ってからというもの、オレという人間の概念を180度覆された気分だ。

まさか自分がこんなに一人の女のコを好きになるなんて思ってもみなかったし、まさか自分が悶々と自分の理性と闘う羽目になるなんて、今までの自分からしてみれば考えられないことだった。

どんなに愛しても愛したりない、なんて台詞をよく聞くけれど。自分には、きっとこれ以上はもう無理だ。とっくに、キャパオーバーを起こしてるんだから。


それに。

まさか、自分の想いが報われるなんて、思ってもいなかったから。
あんな風に抱き締められるのも、キスできるのも、未だになんだか夢のようで。
男として意識して欲しくて、早まったけど。……いや、正直言うと、我慢できなくなったからっていうのもあるんだけど。

でもさ。

キスしたはいいけど、それだけで体が反応しちゃうなんてさ。思わないじゃん、普通。大人なら。中学生じゃないんだから……なんて、自分に呆れてしまう。

だって、キスしてるときの零も、キスしたあとの照れてる零も、ありえないくらい可愛くて。こんなの、無理でしょ。これで勃たなかったら、男じゃないでしょ……なんて言い訳してみればみるほど、悲しくなってくる。

自分がどれだけ零に対して欲情してるのか思い知らされて、情けなくなる。

付き合えただけでもう最高に幸せなのに、次から次へと零が欲しくて欲しくてたまなくなってしまう。

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