第10章 空を覆う雲
―――なんだ、この可愛すぎる生き物は。
ただでさえ熱を持っていた体が、更に熱を帯びていく。
零が可愛いのなんて、勿論、当たり前に知ってる。今に始まったことじゃない。
―――でも、これは反則だろ。
『………百?』
不安そうに顔を覗きこんでくる零。
そんな顔も、全部。可愛すぎて、胸がぎゅううって苦しくなる。油断したらすぐにでも吹っ飛んでいきそうな理性をなんとか押さえ込んで、口を開く。
「あ……当たり前でしょ!ずっと傍にいてくれなきゃ困る…っ!こんなに女のコを好きになるのなんて、零が最初で最後のつもりだし……」
『……う、うん……ありがと……』
「~~~っ!!」
―――もう、やめてくれ……!
そうやって照れたり、嬉しそうに笑ったり……もう、零のすべてが心臓に悪い!ていうか、体に悪い!オレだって健全な男のコだよ!好きなコを目の前にして、二人っきりで、こんなに近くて。自分を抑え込むことがどんなに大変か、零は全然わかってない!!
『どしたの?百、顔赤いよ』
「……え……。あ……あ!零もお風呂入ってくれば?明日ここから仕事行くんだろ?バンさんから聞いたよ!ほら、早くお風呂入ってきなよ!ね?」
『え。う、うん』
戸惑う零の背中をぐいぐい押して、お風呂場へと押し込んだ。
バスタオルと、零と千が泊まりに来た時用に置いてあるお泊りセットをお風呂場にせっせと準備してからバタン!と勢いよく扉を閉めた。