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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第10章 空を覆う雲






『……ごめんね、百』

「え?何が?」

『……その……さっき、電話で冷たく当たったりして』


百はそっと抱きしめていた腕をゆるめて、頭一つ分小さい零の顔を覗きこんだ。


――好きで、好きで、たまらない女のコが、自分の腕の中で、頬を桃色に染めて、大きな瞳を揺らしている。

そんな彼女を見ながら、百は思う。今まで自分をうまくコントロールして抑えられていたのは、”友達”という枷があったから。それが恋人という関係になった今、自分はどうなってしまうのだろう、と怖くなった。
そんなことを考えていれば、零が口を開く。


『今まではね……当たり前だったことがさ……付き合うことになってから、全部が違って見える。……不思議、だよね』

「……うん……オレも、だよ」

『今までは気にならなかったことが気になったりさ、ちょっとしたことで不安になったりさ……。百の隣にいるのなんて当たり前だったのに、なんか……変に緊張したりさ。……こうやってどうしたらいいかわからなくなること、これからもいっぱいあると思うんだけど……』

「……うん」

『……これからも、こうして百の傍に……いれたらいいなぁって……思うよ……っ。……はは、何言ってんだろうね、私、急に』


そういって、零ははにかんだように、照れたように、くしゃりと顔を歪めながら笑った。



「………」




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