第2章 shaking your heart
「すっげー!!陸より全然うまいじゃん!!」
「七瀬さん、それに兄さんまで、完璧に負けてますよね」
「「何!?」」
『ちょっと!ぐだぐだ言ってないで手動かす!!』
「「「は、はいッッ!!」」」
零のスパルタ教育のおかげで、釣り班の収穫は上々。持ってきていたバケツも、魚でいっぱいになっている。
日焼け止めを塗り直してくる、といって車へと駆けていく零の背中を見送ってから、三人は肩を並べて岩場に座りながら、釣りをしていた。
「いやー、でも意外だったよなー!零ちゃん、テレビで見るイメージと、全然違うんだもん!でも、これはこれでいいよな!頼れる姉貴って感じで!ギャップ萌え、って奴!?」
「確かにそうですね。テレビでは、人懐っこい妹キャラ、って感じですもんね」
「全然違うよ!テレビで見た時、びっくりしたもん。零ねぇはいつも強くてかっこよくて頼もしくて……。あ……天にぃの前では、違ったのかもしれないけど……」
どこか悲しそうに話す陸に、三月が続ける。
「そっか……陸と幼馴染ってことは、九条とも幼馴染なんだもんな」
「うん。俺よりも、天にぃの方がずっと零ねぇのこと知ってるよ。すごく仲良かったし」
「しかし、ほんと答えたよな。九条のあの氷点下の眼差し……」
陸は、先日のミュージックフェスタで天から向けられた冷たい表情を思い出す。初めての音楽番組で失敗してしまった自分たちにとって、胸が軋むような、厳しすぎる眼差しだった。