第10章 空を覆う雲
「……零……!」
『な、なに……!』
「もしかして……!それ、ヤキモチ!?」
『………は!?!?』
言われてから、ぞっとする。
―――私が。百に。ヤキモチ?
さっきまでずっと、悶々としていた気持ちは。
あれは、もしかして。
ヤキモチ―――?
『………嘘でしょ、ありえない……』
呆然と呟く零の気なんて知らずに、タオルをぶんぶんと上下に振り回しながらはしゃぐ百。
「どうしようー!零がヤキモチ妬いてくれるなんて、モモちゃん超ハッピー!」
『違……!』
「でも、安心してよ」
タオルをぽいっとぶん投げてから、百は零に向き直る。
さっきまではしゃいで喜んでいたとは思えない程真剣な顔つきで、口を開いた。
「オレは零しか見てないから。ていうか、零しか見えない。困ったことに」
『………っ!』
真剣な顔でそんなことを言うものだから。一気に顔の温度が上がっていくのを感じる。
「あ、携帯見る?いいよ、零ならそういうの大歓迎!」
『……ばっ…ばかじゃないの!』
「なんで?全然、いつでも見せられるよ。ロックナンバー、知ってるでしょ?不安にはさせないようにするけど、もし不安になったら、いつでも見ていいからね」
『そういう問題じゃなくて…!……干渉されたり、束縛とか……そういうの、男の人は苦手でしょ』
「そうなの?」
『そうなのって……』
「確かに、今までは嫌だったよ。……でも、零は別。零だけは、特別」
そういって、百はそっと手を伸ばす。
びくり、と肩を揺らす零の柔らかな髪をそっと耳にかけてから、優しく頭を撫でた。