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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第10章 空を覆う雲




「オレだって、これでも緊張してるんだけどなあ」

『……絶対嘘。にやにや笑ってんじゃん』

「嘘じゃないよ。ただ」

『ただ?』

「零に会えて嬉しい気持ちの方が、上回っちゃってるだけ」


そういって、百ははにかむように笑った。
とくり、とまた心臓が鳴る。


『……へ、へえ!』

「零は嬉しくないの?久しぶりに会えたのに」


タオルを頭にかぶったまま、百が問う。まだ少し濡れた髪が白い頬にかかって、なんだか妙に色っぽい。百の上半身なんて見慣れていたはずなのに、どうしてこんなにどきどきするんだろう。そんな百から視線を外してから、零は小さく口を開いた。


『久しぶりって……スタジオとかパーティとかで顔合わせてるじゃん……』

「二人で会うのは、って意味!ね、嬉しくないの?」

『……。……嬉しい、よ』

「本当?」

『……うん』

「じゃあ、もっとこっち来て」


百の言葉に、ぎょっと目を見開く。


『……は!?』

「駄目?」

『だっ……駄目とかじゃないけど!服着れば!?』

「え?なんで?」

『なんでも何も!そもそもさ!上半身裸ってどうなの!?女の子の前でさ!?仮にもアイドルでしょ!?』


慌てたように言う零に、百はきょとん、としながら首を傾げている。


「そんなの、今に始まったことじゃないじゃん。女の子の前でって……零の前でしかしないけど」

『そ…っそんなの知らないし!私の知らないところで、女の子に見せてるかもしれないじゃん!』


つい口走ってしまってから、はっとした。
さっきまで女の子と会っていたのかな、なんて考えていたせいで、ついそんなことを言ってしまった。自分で言ったことに震えあがりながら、おそるおそる隣に座る百の顔を見上げれば。
百は驚いたように目を見開いて、口をぽかんと開けている。
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