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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第10章 空を覆う雲



『ちょっと!何言ってるんですか!?私行きませんよ!帰る!!』

「駄目。こんな状態で寮に帰らせたら百くんが可哀想」

『は!?可哀想!?……嫌です、今、百と話したくない……!』

「なんで?」

『だって………』


――どう接していいか、わからない。

誰と、何をしていたの。なんて、無意識にこんなことを気にしてしまっている自分が怖い。


『………』


黙ってしまった零をじっと見つめてから、万理は優しく頭を撫でた。


「素直になっていいんだよ。気になるなら、何も考えずに聞いていいんだ。寂しいなら、寂しいって言っていいんだ。恋人同士なんだから。躊躇することなんて何もないんだよ」

『恋人とか、恋愛とか……よくわからないです……。なんで気になってるのかも、寂しいって思ってるのかも、よくわからないんですもん……』

「それが恋人で、それが恋愛ってものだよ。これからたくさん知っていけばいい。ゆっくりでいいんだ。だから、自分の気持ちを素直にぶつけることから始めてみよう。百くんなら、わかってくれるよ。自信を持って言える」

『……万理さん……』


泣きそうな顔をしている零の頭を、よしよしとあやすように撫でてやる。

―――これから彼氏の家に送り届けるのかと思うと、なんだかちょっぴり寂しい。子離れしなきゃならない、親のような気分だ。この年でそんな気持ちを味わうなんて、想像もしていなかった。

なんてしみじみ思いながら、万理はそっと零の手を取った。

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