第10章 空を覆う雲
「僕はハンサムで賢くて情熱的で、ビジネスの勘もあるし、趣味も豊富だ。スポーツも万能で教養にも溢れている。話術も巧みで、社交的、センスもいいし、歌もうまい。らららー」
「……その話、まだ続く?」
「なのに、両親が愛したのは兄だった。おかげでツクモは大分傾いたね」
「………」
「アイドルも同じさ。君たちは欠点のある人間。なのに、人々に愛されて金を生む。その秘密を暴きたいんだ。もしくは、手を突っ込んで掻きまわしたい。べちゃべちゃハンバーグをこねるように」
「………。マジかよ……」
了の言葉に、思わず百の顔が引き攣る。
「あはは、モモは怖いだろう。モモは家族や会社の人間より早く気が付いていたからね。僕の頭が切れることに。僕に人を動かす力があることに。だから、僕に取り行ったんだ」
そういった了に、百は人懐っこい笑顔を作って口を開いた。
「了さん、お願い!一緒にハローワークに行くから、他の就職先を探そう?花屋はどう?」
「まず星影を叩いてツクモの吸収する。それから、君たちを吸収する。この時点でマスメディアは支配できる」
「……クレープ屋さんも悪くないと思うなあ……」
「仕上げはアイドルブームにのって、どんちゃん騒ぎをしながら、効率よく稼ぐ。美味しいハンバーグの出来上がり」
「……星影を叩く材料なんてないだろ。あそこは事務所とタレントが密だ。屋台骨を揺らすネタなんか、誰も……」
「千葉サロンだよ」
了の言葉に、百は大きく目を見開いた。