第10章 空を覆う雲
「やあ、モモ。よく来たね。待っていたよ。あれ、零は一緒じゃないんだ」
笑顔で出迎えた了に、百はにっこりと笑いながら土産を差し出した。
「はい、これ、お土産。そこの駅前で半額で買った柏餅」
「わあ!こどもの日みたいだ。兜をつけて遊ぼうか?」
「武装していいならするよ。お邪魔します」
靴を脱いで丁寧に並べてから部屋に入る百に、了はにこにこと「どうぞくつろいで」と返す。
「……了さん、高層マンションに住んでそうなのに階数低いよな。高いところ怖いの?」
「高層マンションに住んでいると、ベランダからペットを投げられないんだ」
「あんた、マジで冗談も悪趣味だな……。この高さだって、投げたら危ないよ。オレは動物好きだから笑えない」
「もちろん、僕も笑わなかった。さて、どの部分の肉から食べる?先に乾杯する?」
「悪いけど、長居はしない。なんでオレたち3グループと零が、ツクモの所属になる?社長さんがそう言ったの?それとも、社長のお母さんが?首謀者は誰?」
百の質問に、了はにっこりと笑いながら、答えた。
「僕だよ」
「………」
「僕がツクモの新社長になる。来月には正式に就任する予定だ。お祝いのメッセージをどうぞ」
「………。嘘だろ……」
「もっとシャンパンの蓋を開けやすい景気のいい台詞がよかったな。どうして、そう思う?」
「了さん、芸能界に興味なんてないだろ。ツクモの次男だっていうのに、ずっと、ふらふらしてたじゃないか」
「そんなことはないさ。興味津々だよ。特に、モモのやっているアイドルはね」
「なんで?」
「モモ。僕は君の欠点を50は思いつく。君が心酔している千と随分とご執心の零の欠点もね」
「………。ユキさんと零に欠点なんてあるかよ。了さんに二人の何がわかる?」
「ああ、僕が悪かった。その名前はNGワードにしよう。話がこじれて脱線するから。僕の話をしていいかい?」
「どうぞ」