第10章 空を覆う雲
当然のように答えた万理に、零はこれでもかというくらい目を見開いている。
『な……なんで……!?』
「なんでって……。ずっと前から知ってたよ?」
『ずっと前!?付き合うことになったのは先週ですよ!?』
「え!?先週!?」
今度は万理が目を見開いて驚いている。
「……嘘だろ」
『本当ですよ!』
万理は驚愕した。
「(三年って…………。よく我慢したな………百くん……)」
心底同情してから、万理は意を決したように零の両肩を叩いた。
「付き合うことになったなら、もっと積極的に行ってあげないとダメだよ!百くんが可哀想だ!」
『えっ……?』
急に百の肩を持ち出した万理に戸惑う零。
「ほら、百くんが何してるか気になるんだろ?電話してみなさい」
『え、ラビチャじゃなくて電話ですか……?でも、万理さんとのご飯は?』
「大事なことは電話する!俺とのご飯なんて嫌というほどこれからあるんだから!明日のスケジュールは午後に詰め込むから、今日は百くんとゆっくりしておいで!ね!」
万理にごり押され、零は気が進まないながらも百に電話を掛ける。prrと着信音が数度鳴ってから、聞き慣れた声が聞こえてきた。
≪うわ!零から電話なんて珍しい!どうしたの!?≫
『え……あ、えっと』
助けを求めるように万理を見れば、口パクで「がんばれ」といわれた。
『……。……百、今日これから何かあるの?』
≪え?ああ…うん!今日はこれから友達んちで焼肉食べる!≫
『あ……そうなんだ』
≪うん。零はこれから何するの?≫