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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第10章 空を覆う雲


万理の言葉に、更に恥ずかしくなって俯く零。頑張れ、とでも言わんばかりにぽんぽんと優しく肩を叩く万理。


『……。…自分から誘うなんて無理です……』

「なんで?ていうか、あれだけ百くんと遊んでて、零ちゃんから誘ったこと一度もないの?」


こくりと頷く零に、万理は口元を歪めた。


―――百くん……心中お察しします


心の中でそう呟いてから、万理は続けた。


「たまには自分から誘いなよ。向こうはそれを待ってるのかも」

『……なんて誘うんですか?』

「そこから!?」


不器用っぷりに思わずため息が出てしまう。
千も大概だけれど(種類が違うけど)、零も相当な曲者だ。とんでもない二人に囲まれている百に盛大に同情した。


「そうだな、○○食べに行こうよ!とかが一番誘いやすいんじゃないかな?」

『なるほど……』

「でも、わざわざ誘い文句を考える必要なんてないんじゃない?恋人なんだからさ」

『そういうものなんですか?恋人って。……………え?』


うんうんと納得してから、零は違和感に気付いて思わず顔を上げた。


『!?(恋人?今恋人って言った!?え!?)』

「ん?あれ、何かおかしい事言った?俺」

『えっ……あ、いや、その……恋人?え?』

「恋人……だろ?ああ、言い方が古いって?じゃあ、彼氏と彼女?」

『いやいや!そうじゃなくて…!!』


万理に言った記憶はない。付き合っている事を知っているのは、百がその日に報告したという千とおかりんの二人だけのはずだ。ならば、千から聞いたのだろうか。零が頭を張り巡らせていれば、万理が気付いたように言った。


「ああ、大丈夫大丈夫。社長はそのへん厳しくないし、自由にやってくれって感じだから。気にすることないよ、社長も応援してたし」

『しゃ、社長も知ってるんですか!?』

「え?そりゃあ、ね」

『……!す、すいません……!黙ってて…!本来なら私から報告するべきなのに…私が報告することを渋ってたせいで…』


突然頭を下げる零に、万理は首を傾げた。


「え?何が?」

『え……?千ちゃんから聞いたんですよね?』

「いいや。聞いてないよ」

『……?じゃ、じゃあ誰から!?』

「誰からも聞いてないけど」

『………は!?』
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